研究概要 |
最終年度に当たる本年度は, 高精度な伝熱制御技術を用いた治療および生体メカニズムについて検討を行うとともに, 医工学への展開に向けた伝熱制御技術の確立を図った. 併せて研究の総括を行った. 具体的には, 高精度皮膚凍結手術を実現するため, ペルチェモジュールと液体窒素を用いた高速度かつ高精度な冷却装置を開発し, 寒天を用いた冷却実験により本装置の冷却性能を調べた. 数値計算によって内部温度の予測を行い, 動物実験との比較により到達温度と細胞壊死との関係を定量的に評価した. また, 微小領域に対して凍結手術を適用するため, 高圧冷媒の等エンタルピー膨張による沸騰熱伝達を利用した微小クライオプローブを二種類開発した。一つはペルチェ素子を利用し高精度伝熱制御を可能としたもので, 寒天を用いた冷却能力評価, 数値計算による凍結領域予測, 動物実験による臨床適用性を評価した. もう一方は針形状の極細クライオプローブで, 数値計算および解析的評価により沸騰熱伝達と生体凍結領域の関連性について評価した. これらのプローブを用いて, てんかん手術において必要となる脳機能マッピングを高精度に行うための脳冷却マッピング法を本研究で提案した. また, 脳機能と温度との関係性を定量的に評価した. 一方, 温熱療法における灸治療については, 臨床現場における安全性を確保し, 効率的に治療を行うことを目指し, 熱伝導による加熱を行う接触型加熱円盤装置, 赤外線ふく射によって非接触で加熱を行うふく射加熱装置の二種類の治療装置を開発した. 温熱療法に治療効果の評価を熱的観点から定量的に行うため, 加熱温度または伝熱量と被験者の皮膚温度上昇との関係の評価を行った. 以上より, 冷却から温熱に至る伝熱制御技術を医学へ展開し, 医工学分野における伝熱制御技術の確立を図った. 得られた知見は国内外の研究会にて発表し, 多くの反響を得た.
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