研究概要 |
熱流動を支配する空間スケールがミクロンオーダーになるに従い,固体・液体界面に形成されるイオン層,即ち,電気二重層の影響が顕著となることが研究代表者らの一連の研究により明らかとなった.理論的には電気二重層厚さ,即ち,Debye長は数〜百数十nmと言われているが,マイクロチャネル内のバルク現象との相関関係は未だに明らかにされていない.本研究では,固体・液体界面の拡散輸送現象において重要な役割を担うイオン挙動の解明,およびイオンの異方性がマイクロスケール熱流動現象に及ぼす影響を明らかにすることを目的として,エバネッセント(近接場)光および核磁気共鳴(NMR)を併用した画期的な多変量イメージング法の開発を行った.屈折率の異なる石英ガラス壁面および緩衝液間にレーザ光の全反射によるエバネッセント波を発生させ,ナノスケール蛍光粒子の移動距離から電気浸透流速度を計測するナノPIV(粒子画像流速計),そして蛍光強度が壁面ゼータ電位に依存する1価の蛍光色素を用いて壁面ゼータ電位を計測するナノLIF(レーザ誘起蛍光法)を開発し,壁面極近傍の電気浸透流速度および壁面ゼータ電位の同時計測を行い,表面修飾された壁面の化学的特性と流動構造との関係を明らかにした. NMR信号を基にした分子の運動性・束縛性の計測および解明では、MEMS技術を用いて局所領域のみからNMR信号を受信する微細検出コイルを製作した。この検出コイルは印加磁場強度に対応した核スピン共鳴周波数と同じ共鳴周波数のプローブである。微弱なNMR信号を高感度で検出でき、複数コイルが配列できるように共振回路設計を行い製作した。さらに、検出コイルの鉛直軸方向に印加できる勾配磁場コイルの磁場解析を行った。これを基に製作されたコイルでは界面近傍に束縛された分子の異方性挙動,界面での配合性や運動性・束縛性の異方性を取得することが可能となる。
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