研究概要 |
ハイブリッド車などの電動機や産業用モータを対象として,それらに使用される実パワーモジュールやモデル絶縁試料に繰返しサージ電圧印加させて放電発生位置を連続的に検出し同時に部分放電特性を取得できるシステムの構築を行った。電圧インパルス→部分放電→表面物性変化をミクロに追跡し、インバータサージ特有の絶縁劣化メカニズムの解明を試みた。その結果,部分放電開始電圧PDIVが初期の試験サイクルでは大きくばらつき(過渡領域),やがて一定値に至る安定領域となる現象を見出した。この過渡領域から安定領域に移行する結果は,絶縁試料内部に蓄積される空間電荷形成が主要因であることを示唆した。 さらに,産業用モータ絶縁を模擬したエナメル線ツイストペア試料を対象とした繰返しインパルス波形印加に対する部分放電検出技術として,ワイヤレス小形アンテナセンサユニットを制作した。これにより,開発したワイヤレス小形アンテナセンサは,回転機レヤーも出るであるツイストペア試料のインパルス印加時に発生する部分放電を検知できることを示した。一方,検出感度では光電子増倍管(PMT)およびホーンアンテナには少し及ばないこと,インパルス印加時の誘導のノイズの影響が少なくないことが課題となった。これらの成果は,今後,レアー診断可能な新しい診断システムの試作・製品化の指針として活用できる。そのためには,開発したセンサデバイスの誘導ノイズ抑制による感度の向上が必要である。これらの課題を克服して,パワーデバイスを用いたインパルス電圧発生器と部分放電センサを一体化するシステムの試作を進める。 また,次世代SiCパワーデバイスを用いて,超低損失インバータを製作する際に必要なデバイスのスイッチング特性の取得をいった。その結果,ターンオン時間およびターンオフ時間が数十ナノ秒となり,通常のIGBTに比較して十分の1となっていることがわかった。
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