研究課題
本研究では次世代パワーデバイスとして注目されているSiCデバイスを用いたインバータシステムにおける電磁障害の評価および抑制手法の提案、およびインバータ駆動モータを対象としてインバータサージ下での部分放電(PD)現象解明とPD計測法の確立を目的として取り組んできた。EMI・EMC評価するためには、SiCインバータを開発し、SiCインバータシステムを構築する必要があった。本研究では、SiCデバイスの特性把握とインバータ設計の指針とするためのスイッチング特性の測定を行い、Siデバイスとの比較を行った。その結果、Siデバイスと比べて高速かつ低損失な特性が明らかとなり、低損失なSiCインバータ開発の可能性を示唆した。こららのSiCデバイスの特性の測定を活用して、SiCインバータの設計およびゲート駆動回路や保護回路を付加してSiCインバータ開発を行い、モータ駆動に成功した。また、開発したSiCインバータを600W級の電気自動車システムに搭載し、SiCインバータ駆動による電気自動車の試作を行った。一方、インバータサージ下でのPD測定に関しては、インバータサージを模擬した繰返し両極性インパルス電圧下での部分放電開始電圧(Partial discharge inception voltage:PDIV)において、実験初期ではPDIVがばらつく過渡状態から、PDIVが一定値に収束する安定状態へ変化するPDIV特性変化の要因を検討した。また、IEC61934TSで新たに提唱された繰返しPDIV(Repetitive PDIV:RPDIV)と繰返し部分放電消滅電圧(RPDEV)計測システムの構築およびその検討を行った。その特性を検討した結果、印加電圧とPD発生確率の間にはヒステリシス効果が、印加電圧と放電電荷量の間にはPDIV特性変化と同様の特性があることを発見した。また、プリストレス、電圧印加休止依存性、アニーリングがPDIVに及ぼす影響を検討した結果、PDIV特性変化の要因は劣化や表面帯電ではなく、PDにより誘電体内に電荷が蓄積し、弱点部が形成されることであると考察した。また、実機でのPD検出が期待される差動式検出と光検出を比較検討した結果、ツイストペア試料においてはPD検出が可能であることを明らかにした。
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IEEE Transactions on Dielectrics and Electrical Insulation Vol.14, No.3
ページ: 744-750