研究概要 |
20年度は今までに得られた触覚知覚の原理解明に関する知見を基に,高品位皮膚感覚ディスプレイ装置構築を行った. ・触覚知覚の原理的解明 機械的刺激と電気的刺激の併用に関する心理物理的研究を中心に進めた. 機械刺激で空間的に高分解能なディスプレイを作成するのは,アクチュエータのサイズ制約からやや困難であるといえる.一方で電気刺激で時間的な高周波成分を再現することは困難であることがわかっている.また,閾値電流の個人差も大きく,安定して圧覚のみを生成することが困難で,いわゆる電気的な感覚が生じてしまう等の問題も表出してくる.そこで本研究では機械刺激と電気刺激を併用することを考えた.併用には2つの利点があると考えられる.第一にそれぞれが異なる受容器(すなわち皮膚変形の異なる時空間領域)を狙うことにより,相補的に高品位皮膚感覚提示が実現可能となると思われる点である.第2に同一の受容器を電気,機械で刺激することによる感覚閾値の低下,およびそれに伴う感覚のダイナミックレンジの拡大である. 本年度の研究により,適切な機械刺激と電気刺激の併用に関する感度分布に関する知見を得ることに加え,マイスナー小体の特性に関する知見などを得た. ・高品位皮膚感覚提示ディスプレイ これまでの研究で,広い領域において高い情報密度を提示するデバイスの研究において,ロボットのハンド形状のディスプレイを用いる手法を考案してきた.本手法では指先に相当する面積の表示部を複数組み合わせることにより,手指の移動範囲全体に渡って,高密度情報提示が可能となることが分かっている.本年度はこの手法を用いるハンドシステム型ディスプレイの開発を行った. 具体的には力覚情報と皮膚感覚情報の両方を伝送可能とするロボットハンドを用いたマスタスレーブシステムの構築を行う.システムの構築には2種類の触覚情報を取得できるセンサを取り付けたスレーブハンドと,電気刺激装置を搭載したマスタハンドを使用する物とする,これにより従来は操作者に対して力覚のみをフィードバックしていたが,本システムを用いることで力覚に加え電気刺激を用いた皮膚感覚情報を同時に提示可能となった.
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