研究概要 |
本研究では地球規模の統合的で集中的な水循環データと,データ統合情報統融合システムを用い,近年頻発する気象分野における極端事象の発生,拡大,終息の物理的メカニズムと,極端事象の間に存在する共通性と特異性を関連性ついての解析を行う. 平成18年度においては,日本における夏季豪雨イベントを極端事象の解析対象として選定し研究を進めた.解析には気象庁長期再解析データ(Japan Reanalysis Data 25years: JRA25)を用い,解析対象イベントは,気象庁HPより公開されている「災害をもたらした気象事例」の中から前線性豪雨のみを選定し,同じ夏季豪雨でも台風によってもたらされたもの,あるいはその影響が大きいものは除外した.気象庁より公開されている上記の事例は,必ずしも一つの豪雨イベント毎にわけられていないので,それぞれの事例をさらに詳細に個々の豪雨イベントに分類して解析を行った. 日本における夏季豪雨時の大気場の特徴として,気温や気圧,比湿などの空間分布や豪雨をもたらす水蒸気の起源を調べるための解析を行った.水蒸気起源を調べるに当たっては,温度,ジオポテンシャル高度,南北風,東西風データを用いて等温位面におけるバックトラジェクトリー解析を行った.また,豪雨時の大気場の特徴は気圧(ジオポテンシャル高度),風,比湿などの各年の夏の平均場からの偏差を調べることによって解析を行った.その結果,豪雨をもたらす水蒸気はインドやベンガル湾などの南アジアから輸送される場合と,太平洋高気圧が西へ張り出している際に,その高圧性循現場によって西太平洋から供給される場合があることがわかった.また,ジオポテンシャル高度の分布から,豪雨が生じる際には西太平洋に高圧性偏差,日本の北から中国北東部に低圧性偏差が生じ,これらによって日本上空及び周辺域に収束場が形成されることがわかった.
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