研究課題
本年度は、1)アジア域の水循環の極端事象を引き起こすアジアモンスーン循環の形成に重要な役翻を担うチベット高原での加熱メカニズムとその定量的評価、2)我が国周辺の水循環の極端事象(豪雨、洪水、渇水)の温暖化に伴う変化の統合的解析、3)アジア雪氷圏における極端事象の一つである氷河湖決壊(GLOF)、に関する研究を実施した。1)では、チベット高原上の加熱が山岳斜面と高原平地の間で生じる活発な積雲対流現象によって生じることを明らかにするとともに、積雲対流によらない大気加熱の存在も発見した。また衛星を用いた陸面データ同化システムを開発し、チベット高原での陸面からの熱・水輸送による大気加熱の定量的な解析の基礎を確立した。2)では、IPCC第4次評価報告に参加した25の気候変動予測モデルの出力を用いて、豪雨時の気候特性の踏まえた統計的ダウンスケーリングにより、温暖化による日本周辺での100mm/日以上の豪雨の発生頻度の増加がかなり高い確率であることを示した。また気候変動予測モデルの出力と水・エネルギー収支を含めた分布型水文モデル(WEB-DHM)を組み合わせて、利根川流球の200年確率の洪水流量が増加し、渇水危険度が低下することが、高い確率で示された。3)では、ブータン王国のブナチャンチェ川で1994年に発生したGLOFを対象に、同流域で開発したWEB-DHMを用いて決壊を引き起こす氷河湖への流出量と、決壊流出量を算定し、その精度の妥当性を評価し、GLOF早期警戒システムの基礎を確立した。
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水工学論文集 53
ページ: 397-402
Annual Journal of Hydraulic Engineering, JSCE Vol.53
ページ: 1-6
J. Geophys. Res. Vol.113,D10104
ページ: doi.10.1029/2007JD009321