研究概要 |
放射線とベンゼンによって特異的に誘発される白血病、ならびに白血病の根源事象とされる染色体の異常に着目し、染色体異常をバイオマーカーとしてベンゼン代謝物の放射線当量、ならびに白血病(致死・発ガン)ユニットリスクを求めた。 ベンゼン代謝物のうちカテコール(CAT)、ハイドロキノン(HQ)をヒト抹消血リンパ球細胞に単独または複合曝露することで、その複合的な影響を評価する。CATについては、曝露濃度依存的に染色体異常を有する細胞数が上昇する傾向が見られ、曝露濃度10μMでは無処理の約30倍の染色体異常が誘発されることを確認した。また、HQについては、曝露濃度1,3,6μMでは無処理と比較して、染色体異常を持つ細胞数が36-38%と約20倍程度に上昇しているものの、濃度依存的傾向は見られない。しかしながら、処理濃度10μMの場合には、染色体異常は70%の細胞で観察され、無処理と比較して35倍の染色体異常が誘発された。異常の実験結果から得られた用量反応関係および低線量率長期曝露における用量反応関係とからヒト抹消血リンパ球細胞にベンゼン代謝物HQ、CATの単独、もしくは複合曝露に対応する放射線等量を算定した。これをもとに、染色体異常をバイオマーカーとしたベンゼンの白血病リスク評価を行ったところ、複合曝露の結果からは、1μg/m3における白血病発ガンユニットリスク、白血病致死ユニットリスクはそれぞれ2.8×10^-7,2.8×10^-7と算出された。これは疫学データから推定されたEPAの算定値と比較して約10分の1の過小評価となった。
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