研究概要 |
セラミックスは優れた電気的特性,耐熱性,高温強度特性などを有しており,将来の環境,エネルギー,情報分野に必須の材料である。本研究では,"転位"並びに"転位偏析"を積極的に導入することで,全く新しいセラミックスデバイスを開発することを目的としている。(1)高密度ナノ細線を有するデバイスの作製においては,高密度配列制御したアルミナおよびジルコニアにそれぞれチタンならびにクロムをドーパントとして添加し,ナノ細線の作製を行った。また,部分転位間に存在する積層欠陥を利用した原子面シートの作製も試みた。さらに,ドーパントの選択を第一原理理論計算により抽出する手法を開発した。(2)周期配列ナノ細線デバイスの作製においては,種々の回転軸を有する小角転位粒界をバイクリスタル法にて系統的に作製した。得られた試料を高分解能走査透過型電子顕微鏡法(STEM-HAADF法)で観察し,その転位コアの原子構造直接観察を行った。アルミナーチタン系,ジルコニアーイットリウム系およびチタン酸バリウム系において,それぞれ電気伝導性を確認した。(3)高密度転位単結晶デバイスの作製については,ジルコニア系およびチタン酸ストロンチウム伝導体において検討し,転位におけるパイプ拡散が転位コアの構造,雰囲気,温度,ドーパントの種類によって変化することを定量的に解析した。これより得られたナノ細線の二次イオン質量分析(SMS)測定を行い,各ドーパントの拡散係数を求めた。本年度の結果をまとめて,転位構造,配列を制御したナノ細線セラミックスデバイスの設計指針を提案した。
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