研究概要 |
酸化物のモデル系としてMgOおよびZnO基の擬2元系を対象に,(1)有限温度での相転移挙動,(2)溶質元素の固溶限の導出,(3)中間相生成の検討という3つの課題を設定し,系統的な第一原理熱力学計算を行うとともに,これを実験により検証する.また圧力依存性についても,計算と実験の両面から検討する.具体的には,MgO系とZnO系を対象に,(1)通常の常圧下での高温熱平衡実験,(2)高温高圧下での熱平衡実験,(3)パルスレーザー成膜(PLD)法により合成した過飽和固溶体など準安定平衡相の相分離実験を行う.実験と計算値の齟齬が大きい場合には,理論計算にフィードバックをかけ,計算モデルの精度について検討する. 平成18年度には,MgO-ZnOの擬2元系を対象に,計算状態図の圧力依存性を検討し,これと平行して,(1)通常の常圧下での高温熱平衡実験,(2)高温高圧下での熱平衡実験,(3)パルスレーザー成膜(PLD)法により合成した過飽和固溶体など準安定平衡相の相分離実験を行った.MgO-ZnOの擬2元系は,(1)結晶構造が比較的単純なモデル系,(2)実用的に重要,(3)高純度原料が得やすい,(4)実験温度・雰囲気などの条件が達成しやすいなど多くの特長を有している.この系について,第一原理フォノン計算により比熱,エンタルピー,エントロピー,自由エネルギーなどの温度依存性を算出した.これにクラスター展開法およびモンテカルロ計算を連携させることにより,固溶体の自由エネルギーを導出し,計算状態図の圧力依存性を算出した.次に,常圧下での高温熱平衡実験,高温高圧下での熱平衡実験,パルスレーザー成膜(PLD)法により合成した過飽和固溶体の相分離実験を行い,計算結果を検証した.本研究の実験にはX線吸収分光法を多用したが,それを理論計算により解釈した. これら計算のプロセスを幾つかの論文として成果発表した.
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