研究概要 |
平成19年度は、(1)Ti,NbおよびTa金属の水溶化技術を開発し、(2)水溶性ニオブ錯体の単結晶を育成すると共にその構造を決定し、(3)水溶性チタン錯体を含む水溶液を水熱処理することにより、酸化チタンの多形を選択的に合成し、また形態制御を実施した。具体的な成果は以下の通りである。 (1)Ti,Zr,NbおよびTaの金属のそれぞれをアンモニア存在下、過酸化水素水で処理してペルオキシ金属錯体水溶液を調整し、各種オキシカルボン酸やオキシアミノ酸を添加することで長期間安定な水溶液を得ることに成功した。 (2)5塩化ニオブのメタノール溶液にアンモニア水を添加して得られるニオブ酸沈殿をアンモニア存在下、過酸化水素水で処理することで得られる水溶液から単結晶を育成することに成功した。これはニオブのペルオキソ錯体であり、アンモニウム塩とじて水に溶けることが判明した。ニオブにペルオキソ基が4個配位することが明らかになった。 (3)水溶性チタン錯体を含む水溶液のpHを変化させ、150-230℃の範囲で水熱処理することにより、酸化チタン多形のうち4つの多形(アナターゼ、ルチル、ブルカイト、TiO2(B))を選択的に合成することに成功した。特にグリコール酸錯体から、合成が困難とされるブルカイトとTiO2(B)を一段で合成することに初めて成功した。またアミノ酸やグリコール酸など、過剰に添加物として加えることにより、ルチル型酸化チタンの形態を制御でき、添加物の量が多くなるにつれて、アスペクト比の大きな粒子を得ることに成功した。これまで困難とされた酸化チタン多形の選択的合成に成功し、しかも一段で合成できるルートの開発に初めて成功し、ブルカイトやTiO2(B)の性質を明らかにした点に大きな意義がある。
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