研究概要 |
本研究の目的は,放射光を利用した精密電子密度分布解析法をさらに発展させ,分子動力学シミュレーションを相補的に組み合わせることにより,機能性をもつ種々の無機結晶の構造ダイナミクスと物性との相関を明らかにすることである。この目的を達成するために,新規に購入したCCD高精度回折計に試料加熱装置をとりつけ,種々の機能性無機化合物の高温電子密度分布解析を行った。また,実験室系光源を用いた実験と平行して,放射光単結晶X線回折実験を高エネルギー加速器研究機構の物質構造科学研究所ビームライン14Aに設置された水平型四軸回折計を用いた電子密度分布解析を行った。希土類ルテニウム複合酸化物単結晶の高温相転移に伴う構造変化の決定,電子密度分布解析を行い,Gd_3RuO_7,Tb_3RuO_7,Dy_3RuO_7等の擬二次元導電体機能性物質の構造物性を調べた。また,Ca-Nd-Ru-0系およびSr-Nd-Ru-0系に新規化合物を見出した。特に前者はキラルな空間群に属すことを見出した。昨年度から行っているリチウムイオン伝導性を有するLiMn_20_4およびAl_20_3コランダム単結晶については分子動力学計算シミュレーションも進展し,オーストラリアなど海外におけるいくつかの招待講演を含め,多くの国際会議で成果報告をした。また,今年度は研究成果を6報の論文にまとめた。現在も,いくつかの論文の投稿を計画中であり,最終年度である次年度に向けて順調な進捗状況にある。
|