研究概要 |
Nb-TiNi系と同様にB2-TiFe相とbcc-(Nb,Ti)相の2相領域が存在すると予想されるNb-TiFe系について合金探索を行った。Nb-TiFe系では、Nb-TiNi系やNb-TiCo系と異なり、TiFeとNbを結んだ線上付近では非常に脆いNbFe相が生成し、TiFe+(Nb,Ti)の2相領域は存在しない。ところが、Nb-TiFe系では、高Ti側においてTiFe+(Nb,Ti)2相領域が存在し、Tiが約50%で完全な共晶組織を呈することが分かった。しかし、共晶合金は耐水素脆化性が低く、水素透過試験が不可能であった。この共晶組成よりNb過剰側およびNb不足側では、初晶(Nb,Ti)相および初晶TiFe相がそれぞれ生成するが、TiFe相が初晶として生成した場合にのみ水素透過度が可能であり、673KでPdの2倍程度の水素透過度を示した。以上より、Nb-TiFe合金においても、合金組成の最適化により高い水素透過度を有する合金を作製可能であることが分かった。 耐水素脆化性に優れたNb-TiNi系と水素透過度に優れたNb-ZrNi系の中間組成であるNb-(Ti,Zr)Ni系において、水素透過度、室温延性、耐水素脆化性を満足する合金組成の探索を行った。Nb-TiNi系にZrを添加すると、水素透過度は増加する。ところが、Zr添加量が12%を超えると、ZrNi相が生成して室温延性および耐水素脆化性の低下することが分かった。以上より、実用上最低限の延性、耐水素脆化性を満足するZr量の上限は12%であるといえる。この合金を熱処理すると、共晶{TiNi+(Nb,Ti))}が消失し、TiNi相中に(Nb,Ti)相が粒状に析出した組織へと変化する。熱処理後も耐水素脆化性は低下せず、Pdを超える水素透過度を示すことが分かった。
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