| 研究概要 |
熱電材料の特性は,ゼーベック係数,電気伝導度,熱伝導度をα,σ,κとすると,熱電材料の特性は性能指数Z=α^2σ/κあるいはこれに温度Tを乗じた無次元性能指数ZTで表され,この値が大きいほど熱〓電気の変換効率が高く,実用化を目指してZT=1を越える材料の探索が行われている.世界的に多種多様の材料が熱電材料の可能性を試されているが,我々は独自にBiなどの有害元素を含まない環境共生型のRe,Ruのシリサイドに注目して,これらシリサイドが示す特異な微細組織を制御して良好な熱電特性を付与することを目指している.この特異な微細組織はシリサイドを形成する副格子(サブラティス)の配列の多様性に基づいたもので,本年度は特にRu_2Si_3-Mn系についてSi副格子の変調組織を伴う3元化合物の固溶範囲を調べ,一連の3元化合物化合物について組成と結晶構造を決定し,熱電特性を調べた.Ruシリサイドでは,Re添加と同様にMn添加で広い範囲でチムニーラダー相が形成され,Si/(Ru+Mn)-Mnプロットによりp-n伝導の制御が出来る.Re添加に比べMn添加ではより広い組成範囲でn型伝導を示し,金属副格子の体積膨張が小さいためp-n伝導の遷移がかなり高Mn添加量でしか実現しないことがわかった.RuとMnの原子量が大きく異なるため,かなり広い組成範囲の一連のチムニーラダー相が1つの試料に密に形成される.金属副格子の結晶方位は一定に保たれた中でSi副格子の周期が変化するため,電気伝導は阻害されず,熱伝導のみ低下する熱電材料として理想的な界面が多数形成される.単結晶上の試料を作成し,熱電特性を測定するとRuをMnで90%置換した材料で,無次元性能指数(ZT)が880Kで0.76と非常に大きな値を示した.これは,ナノ組織制御により熱電特性を飛躍的に向上させることができることを示している.
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