研究概要 |
原料Siの供給不足問題に端を発して直径1mm程度の球状Si単結晶の育成が近年注目を浴びている.球状単結晶は主にドロップチューブ法により育成が試みられているが,完全溶融状態で噴射するため融液は大きく過冷し,ほとんどの場合多結晶化する.代表者らはこれまでに,電磁浮遊炉を用いた直径〜8mmの単一液滴の凝固実験により,すべての面が{111}に囲まれた<110>デンドライトが成長する低過冷度(<100K)において成長界面の不安定化を招くことなく単結晶に近い試料が得られることを明らかにしており,この点から液滴の落下中に低過冷度で核生成・結晶化させる外的制御法を模索してきたが,再現性のある手法を確立するまでには至っていなかった.本研究では,"過冷度の外的制御"に替わって"過冷しない状態で噴射"させることに着目し,融点での固液共存状態で微細な結晶を含んだ液滴を噴射させるセミソリッドプロセスにより,球状単結晶化を試みた. 石英ノズル内でSiを高周波加熱により完全溶融させた後融点まで冷却し,一旦固液共存状態とした後,再度加熱し,直後にArガスにより噴射した.100K程度過加熱した融液を噴射する従来法による試料との比較を行った. 試料断面の結晶方位解析により得られた結晶を,結晶粒の数により1〜3個(A),〜10個程度(B),〜50個程度(C)と分類した.表面で観察されるデンドライト形状をこれまでの電磁浮遊炉で得られた試料と比較した結果,それぞれ,低過冷度(〜10K),中過冷度(〜100K),高過冷度(〜200K)に該当することが明らかとなった.固液共存状態での噴射により低過冷度に該当する結晶(A)の割合は9.6%から30%に増加し,この結果,核となる結晶を含んだ液滴を噴射させるセミソリッドプロセスの有効性が明らかになった.
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