これまでに磁性細菌が生成する様々な形態のバイオマグネタイトが観察されているが、その形態制御機構は未だ明らかにされていない。そこで本研究では種間による形態の違いに注目し、弾丸状のバイオマグネタイトを生成するD. magneticus RS-1と切頂八面体のバイオマグネタイトを生成するMagnetospirillum magneticum AMB-1の比較プロテオーム解析、比較ゲノム解析及び特徴的なタンパク質の機能解析を通して、磁性細菌の結晶形成機構を中心としたバイオマグネタイト生成機構の詳細な解析を行った。その結果、RS-1株の大量培養、タンパク質の高感度検出システム導入により、これまで同定困難であった微量タンパク質も含め計176個のタンパク質をRS-1株のバイオマグネタイトから同定することに成功した。そこで、得られたRS-1株のプロテオームプロファイルと既に獲得しているAMB-1株と比較解析を行ったところ、バイオマグネタイトを構成するタンパク質プロファイルにおける様々な特徴や共通性が明らかとなった。また同定したタンパク質の遺伝子マッピングを行ったところ、Magnetospirillum属の磁性細菌でこれまでに報告されている領域とは別のバイオマグネタイト合成関連Genomic islandの存在が明らかになった。そしてRS-1株から同定したタンパク質の中には、バイオミネラリゼーションの際の足場となるような構造タンペク質、結晶と相互作用していると思われる両親媒性の低分子タンパク質が多数存在していた。さらにペプチドを用いた実験により、同定したタンパク質の結晶形態制御能が確認された。そのためRS-1株から同定されたこれらの晶形成コアタンパク質群はRS-1株の生成する特徴的なバイオマグネタイトの形態を制御している因子であることが考えられた。今後、これらの結晶形成コアタンパク質群を組み合わせる事で、結晶形態のより緻密な制御が可能となる事が期待される。
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