研究概要 |
平成18年度は,(1)惑星大気実気流風洞の設計最適化と性能評価,(2)火星大気を模擬した希薄風洞の開発,(3)希薄・低温環境で使用できる光学的分子イメージング技術の開発という3つの目標をかかげて研究を行った.(1)については,圧力1000Pa,温度200K,主成分CO_2という火星大気が模擬できる「火星大気風洞」(Mars Wind Tunnel)の詳細設計を行った.その結果,当初予定していたルートビーク管方式では,低圧化によるReynolds数の減少で駆動管内の境界層が急速に発達し,測定部気流の一様性が悪化すると言う問題が発生することが明らかになった.そこで,風洞の駆動方式を見直し,一般の風洞に用いられている送風機方式を含む複数の駆動方式の比較検討を行ったところ,低圧での実験には,測定部下流で超音速ガスジェットを噴射し測定部に気流を誘導する「エジェクター駆動式」が最も有望との結論を得た.このため,(2)については,風洞の全体構成を見直し,真空チャンバ・風洞本体(吸込式),バッファタンク(既存品利用),連結配管等からなる新しい構成の風洞を考えた.これらの構成要素うち,真空チャンバの製作を平成18年度に行った.エジェクター方式の採用によって,マッハ数0.7で約3秒間一様な気流を作り出せると予測している.一方,(3)の風洞気流の計測技術の開発については,感圧塗料・感温塗料の高感度化を目指して2種類の新しいセンサーの開発に取り組んだ,金属ナノ粒子のプラズモン励起を利用したセンサーについては,ナノ粒子と色素の濃度がある組み合わせになるときに,発光強度が3倍に増加することがわかった.また,微差圧に反応する多孔膜センサーについては,差圧が1000Pa以下の感度が従来の約100倍に達することを確認した.
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