研究概要 |
D-^3He核融合において、その生起場所と反応率を同定することは性能評価上極めて重要である。そこで先ず,従来方式(グロー放電方式)の慣性静電閉じ込め(IECF)装置において,生成する14.7MeV陽子を計測する固体検出器の前面に直径の異なる複数のマスクを設置して,生成率空間分布の同定を最尤推定期待値最大化法を用いて試みた。その結果,以下の成果が得られた。 1)陽子計数結果にポアソン分布の誤差を考慮して統計誤差を評価した.さらに,S/N比の向上及び解析対象空間の分解能を上げるための新式計測装置の設計・製作を行ない,陽子生成率空間分布の計測・同定手法を確立した. 2)上記新測定体系により,陰極及び導入端子の金属表面での核融合反応が極めて支配的であるとの結果を得た.特に,今まで見落とされてきた電極支持部(導入端子)での発生の寄与も大きいことが判明した.この結果から,陽子発生分布の陰極の材質・形状への依存性が今後の大きな検討課題であることも判明した. また,D-^3He核融合反応率の放電電流依存性について, 3)電流に対する核融合反応強度分布の依存性計測で、電流増加につれ陽子発生量は増加したが増加率が下がる非線形な結果を得た.これは陰極表面に吸着したD_2ガス及び^3Heガスが熱の上昇に伴い放出してしまうために起こると考えられる. さらに,従来のグロー放電方式の課題であった,残留ガスとの衝突によるイオン損失やイオン平均エネルギーの低下の問題を解決するため提案していたマグネトロン型イオン源併用方式について,精密な検討を行った結果、以下の知見を得た. 4)低圧力動作において,当初予測し得なかった非線形な出力向上を観測した。現象解析のための追加実験を行った結果,この新動作モードを発現させるためにはある閾圧力を下回る必要があることが判明した. 一方,主に上記4)の知見を活かすためにマグネトロン型イオン源の概念設計を変更する必要が生じたため,当初予定していた改良機製作・動作試験を18年度中に完了することはできなかった。このため経費を繰り越して,平成19年9月まで,改良機設計と初期動作試験,データ分析を行った。その結果,上記2),4)の新たな知見を活かした改良機の設計を完了した。また,平成18年度内に当初予定通り製作した直径60cmの大型円筒形真空容器によるD-^3He核融合陽子源装置の組み立て,周辺機器の整備を順調に進め,まもなく運転を開始する予定である。
|