平成20年度は、水底表層ハイドレートの分布形態および人工/天然ガスハイドレートの基礎物性情報を取得するための測定解析を行い、主として以下のような成果が得られた。 ・オホーツク海とバイカル湖の表層ハイドレートに含まれているガスの主要成分はメタンガス(共にバクテリア起源)であるが、バイカル湖ククイ泥火山の場合、僅かにエタンガス(熱起源)が含まれている。また、サハリン沖の表層ハイドレートに包有されているメタンガスはCO_2還元によるが、バイカル湖の場合は酢酸分解で生成されている(ガスクロマトグラフ分析および同位体分析)。 ・バイカル湖中央および南湖盆の湖底表層部から発見されたシデライト(FeCO_3)は、サハリン沖海底表層部のカーボネートに較べて極めて微量である。これは、海水はカルシウムイオンを豊富に含むが、湖水中にはほとんど無いためである(イオンクロマトグラフ分析、同位体分析および電子顕微鏡観察)。 ・サハリン沖の湧出ストラクチャーについて堆積物コア解析を行った結果、カオスおよび北見ストラクチャーは海底深部からはガスおよび水が共に湧出しているが、ヒエログリフストラクチャーの場合、ガス湧出が卓越しており、湧水はほとんど無いと考えられる(イオンクロマトグラフ分析および同位体分析)。 ・ヒエログリフがガスのみの湧出ストラクチャーであるのは、このストラクチャーが局所的なハイドレート密集域の端に位置しており、ガス水湧出路が形成される断層分布に規制されている可能性がある。
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