研究概要 |
コミカンソウ科のカンコノキ属のさまざまな種を中心に、開花フェノロジー、雌花の形態、植物の系統、送粉様式、胚珠寄生ホソガの送粉/産卵行動,ホソガ類の形態・系統に関するフィールド調査と室内実験を行なった。それぞれの種が特徴的な開花フェノロジーを持っており、それは胚珠の発達パターンやハナホソガの成長パターンとも密接な関係にあることが明らかになりつつある。また、カンコノキ属の3種で、自殖率、送粉効率、重複産卵された胚珠に対する間引きの有無などを調べる調査を行なった。その結果、ウラジロカンコノキは、重複産卵された花を間引くことによって、重複産卵への制裁をしていることが明らかになった。またカンコノキ属およびオオシマコバンノキ属の花の香りの採集と、ガスクロマトグラフィーによる揮発性物質の分離・同定・定量・生物検定を行なった。その結果,ハナホソガは確かに植物の香りによって誘引されていること,花の香りは特に夜に放出されており、種間で顕著な違いが見られること、雌雄の花間にも花香の差があることなどが明らかになった。 種子食性のホソガと潜葉性のホソガで寄主特異性を比較したところ、前者は後者より高い寄主特性を持つことが明らかになった。送粉を行う種子食性ホソガでは、正確な寄主識別が子の生存に必要とされるが、このことが絶対送粉共生系の高い寄主特異性をもたらしていることが明らかになった。 キノコバエ類によって特異的に送粉されるチャルメルソウ属植物について、葉緑体および核のDNAの塩基配列より,系統推定および浸透交雑の解析を行ない,送粉者が介在した種分化と,雑種形成が介在した種分化のパターンを明らかにした。さらに各種の花の香り成分の分析を行ない、チャルメルソウ属においても、特定の送粉者の特異的誘引に花の香り成分が重要な働きをしているだけでなく、種分化にも関わっていることが明らかになった。
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