研究課題
Stereo-Array Isotope Labeling(SAIL)法は、安定同位元素2H、13C、15Nを位置・立体選択的にタンパク質構成アミノ酸に導入することにより、必要な構造情報を失うことなくタンパク質のNMRスペクトルを簡略化し、シグナルのS/N比を大幅に高めることができるNMR試料の最適化技術である。SAIL法により従来のNMR法では不可能であった高分子量タンパク質・タンパクし複合体の構造解析が可能となった。SAIL法がもたらす単純かつ高品質なNMRスペクトルは、NMR法の信頼性の向上、及び構造解析の自動化という観点からも大きな効果が期待できる。本課題において、溶液タンパク質の構造解析プログラムCYANAを基に我々が開発した完全自動構造解析化アルゴリズムFLYAの、SAIL法との融合を主たる目標としている。SAIL-CYANA法の詳細はNature誌のArticleとして、FLYAアルゴリズムはJ.Am.Chem. Soc.誌にそれぞれ掲載された。また、SAIL-CYANA法の応用としては、SARS coronavirus nucleocapsid蛋白質C末端ドメイン(28KDa)の二量体構造を決定し、タンパク質-核酸相互作用によるRNAパッキング機構に関する知見が得られた(J. Mo1. Bio1.印刷中)。さらに、ミロシナーゼ結合蛋白質と推定される32kDaのシロイズナズナ由来の仮想蛋白質(At3g16450.1)の溶液構造をSAIL-NMR法により決定した(投稿中)。一方、SAIL-FLYA NMR法の低分子量タンパク質への実験は予期した成功を収め、既にNature Protocols誌に掲載された。引き続き実施したSAIL-FLYA法による全自動構造解析法の体系的評価により、従来の均一13C、15N二重標識蛋白質試料にFLYAを適用する場合に比べ、立体構造解析に必要十分なNMRデータセットは著しく減少し、従って高価な測定装置の占有時間を大幅に短縮されることが示された。このことから、SAIL-FLYA法は少なくとも分子量25kDa程度までのタンパク質の溶液内立体構造を、全自動構造解析できる可能性が示され、実証実験を進めている。
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Journal of Molecular Biology (in press)
Nature Protocols 2
ページ: 2896-2902
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104
ページ: 9236-9241