研究課題
今年度は、初めに、比較的低分子量のタンパク質を例に、SAIL-FLYA法の性能評価を行った。この結果から、SAIL-FLYA法ではより少数のNMRデータセットを用いても全自動で正確な構造決定が可能であることを確認できた。SAILユビキチン(分子量8kDa)の場合であれば、二つの2D13C,15N-HSQCと二つの13C,15N-edited3D NOESY、および一つの3D triple resonanceデータセットのみで、従来の人手による方法のものとほぼ同一の正確な構造決定が全自動解析可能であることが示された。この成果は、論文としてJ.Bio.NMR誌に投稿中である(Ikeya et al.)。一方で、SAIL-FLYA法への応用可能な自動化学シフト帰属法であるDYNASSIGNアルゴリズムを新たに開発した。この方法はピークを粒子として表現し、予測した帰属とピーク位置の差をエネルギー関数に変換して、分子動力学法よりこれを最小化するユニークな方法であり、その成果をJ.Bio.NMRに発表した。さらに、SAIL-CYANA法の応用として、シロイヌナズナ由来At3g16450.1SAILタンパク質の構造決定を行い、その内容をFEBS Journalに発表した。このタンパク質は比較的分子量が大きく(299残基、32kDa)、配列上に二つの高い相同性をもつ領域があり、N、C末端の二つのドメインが独立で運動するといった特徴を持つ。このため、多くのシグナルの重複や一部の領域での線幅の広がりなど、NMR解析には困難な試料であったが、SAIL-CYANA法を用いることにより高精度に構造決定することができた。また、生きたままの細胞の中でのタンパク質の三次元構造をCYANAを用いて世界で初めて決定し、Nature誌に発表した(Sakakibara et al.,Nature458,102-105)。
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Nature 458
ページ: 102-105
J. Biomol. NMR 43
ページ: 97-109
FEBS J. 275
ページ: 5873-5884