研究概要 |
近年,生体膜上でドメイン形成や、ラフトなどのリン脂質やリン脂質-蛋白質複合体が細胞機能に直接関与していることが分かってきた。しかしこれらの研究の多くは試験管内の実験に基づいた結論であり、実際の生体でそのような凝集体や複合体がいつどのように形成されるかに関しては明らかにされていない。これら凝集体や複合体の形成をいち早く検出するためには、元となる分子の挙動を細胞内で高感度に検出するシステムの構築が急務である。 そこで本申請グループは、蛍光相関分光法(FCS)を利用して生体膜結性分子複合体の挙動を生きている細胞の生体膜上で2次元的かつ動的に捉えることを目的とした。また,生体膜でも測定場所での違いが大きく反映されるために、正しい評価を行うためには多数の点でFCS測定を行い、画像情報として分子の「動き」や「結合」の情報を得る必要がある。これらの点を克服するために、全反射光学系を採用し、細胞膜上の多数の場所でFCS測定を同時に行うことができることが重要である。そこで本研究では、申請者がこれまで研究を進めてきたFCSの特長を生かしつつ、生体膜を対象としてその技術を2次元に広げた全反射蛍光相関分光装置(Total Internal Reflection Fluorescence Correlation Spectroscopy、TIR-FCS)の研究開発を行った。 初年度は,計画では4台であった,検出装置を拡大して7台とし,検出効率を高め,実際にバンドル化した光ファイバーの設置と検出器の設定し,装置の構築を行った。溶液中の蛍光色素や,蛍光粒子の検出を行い,実際の測定領域が予想通りの形状,大きさをしていることを確認した。また,膜結合GFP蛋白を細胞内発現させ,多点全反射FCS計測により生体膜上での膜結合性分子の検出が可能であることを照明した。
|