研究概要 |
Vibrio alginolyticusの極べん毛は、ナトリウムイオンの共役による電気化学ポテンシャル差をエネルギーにして回転する。べん毛モーターの回転に必要なタンパク質としてPomA, PomB, MotX, MotYが同定されており、このうちPomA, PomBは内膜でナトリウムイオンチャンネルとして機能していると考えられている。MotX, MotYはTリングを形成していることが示されている。このTリング構成タンパク質であるMotYについては、2.9Å分解能でX線結晶構造を昨年度得ることが出来ていた。今年度は、そのリファインメントを行い構造の最終決定を行った。FliG、FliM、FliNから構成されるCリングは、基部体の下に存在して、回転子として固定子と相互作用する。回転力を作り出す生化学的相互作用の解析の第一歩として、ビブリオ菌でのCリング構造を含むべん毛基部体の精製を行った。菌体のスフェロプラスト化効率を改善し、膜の可溶化条件を検討した。その結果、界面活性剤にCHAPSを用いた場合に、FliGシグナルが特に強く確認できた。しかし、FliNとFliMのシグナルは全く得られなかった。可溶化で得られた基部体を、さらにショ糖密度勾配遠心で精製を行う、また、電子顕微鏡で基部体の構造を詳細に観察するなどを計画している。べん毛モーターの精製過程において固定子複合体が容易に失われてしまうことから、固定子を含む完全な状態のべん毛モーターの単離は未だ実現されていない。そこで我々はこれを実現する手段として、回転子Pリングタンパク質と固定子タンパク質をクロスリンクさせ、固定子複合体の解離を防ぐことを考えた。これまでに行ったFlgI及びMotB Cys置換体の解析から、mPEG-maleimideにより修飾されやすい置換体は、運動能及びタンパク質量に影響を与える置換体とはほぼ重なり合わないということが分かった。この結果を踏まえ、我々はFlgIとMotBのジスルフィド架橋における有用なCys置換体の候補を選び、両者の架橋産物であると推測される産物を検出することに成功した。
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