RNAi依存性ヘテロクロマチン形成に関与する新規遺伝子の探索のために、前年度までにヘテロクロマチンによるマーカー遺伝子発現抑制を指標に変異株のスクリーニングをおこなった。その結果、機能未知の新規遺伝子を同定しdsh1と名付けた。この遺伝子の機能解析をおこない、1)Dsh1がRNAi依存性ヘテロクロマチン領域にRNAi因子依存的に局在すること、2)既にヘテロクロマチンに関与することが報告されているが機能未知の因子Ers1と複合体を形成することを明らかにした。また、dsh1破壊株ではヘテロクロマチン由来non-coding RNAの蓄積が見られること、マーカー遺伝子上のヒストンH3K9のメチル化やヘテロクロマチンタンパク質Swi6の局在がなくなるが、nativeなヘテロクロマチン領域ではH3K9メチル、Swi6ともある程度残存していた。これらの表現型はRNAi因子dcr1破壊株と酷似しており、Dsh1がRNAi経路で働く全く新規の因子で有ることが示唆された。また、RNAi依存的ヘテロクロマチンが崩壊するRNAポリメラーゼIIの変異株rpb2-m203の解析からRNAポリメラーゼIIがRNAi機構の引き金となるヘテロクロマチンnon-coding RNAの転写をおこなうだけでなく、non-coding RNAへのRNAiエフェクター因子RITS複合体の結合を促進していることを示唆する結果を得た。これはnon-coding RNAとRNAi機構の共役を具体的に示す重要な知見である。
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