研究概要 |
本研究は種々のセマフォリン分子群による臓器形成制御機構を明らかにするために行われ、平成18年度は以下の成果を得た。 1.セマフォリン受容体Plexin-A1欠損マウスの作製とその解析:Pexin-A1はNeuropilin-1とともにクラス3型セマフォリンSema3Aの受容体複合体を形成するだけでなく、クラス6型セマフォリンSema6Dのリガンド結合受容体としても機能することが知られている。Plexin-A1欠損マウスを作製しその解析を行い、Plexin-A1がSema6Dの受容体として、破骨細胞の分化や樹状細胞の活性化において必須の機能を果たしていることを明らかにした。 2.神経提細胞の遊走と左心室流出部〜大動脈系の形成におけるセマフォリンの役割:心臓の左心室流出部〜大動脈系は神経管背側より生じた神経提細胞が同部位へ移動し増殖することにより形成される。この過程における、セマフォリンとその受容体の発現を解析し、心臓に向かって遊走する神経提細胞上では、初期からセマフォリン受容体Plexin-A2が発現し、また後期に.Plexin-D1,Neuropilin-1が高発現することを見いだした。さらに、Plexin-A2のリガンドであるSema6A,Sema6Bが神経管背側および体幹の外側から鰓弓にかけて、あたかも神経提細胞の移動路を取り囲むように発現していること、一方Plexin-D1とNeuropilin-1受容体複合体のリガンドであるSema3Cは左心室流出部の筋肉層に発現していることが明らかとなった。さらに神経提細胞の遊走に対して、Sema6A,Sema6Bが化学反発活性を発揮し、またSema3Cが化学誘引活性を発揮することから、これらセマフォリンのシグナルによって神経提細胞の神経管から心臓への遊走が巧妙に制御されていることが明らかとなった。
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