研究概要 |
TGFβスーパーファミリーに属するNodalは前後軸形成、原条形成及び左右軸形成などの胚発生の基軸となる局面で形態形成を司る分泌因子である。Nodalシグナルの制御によってこれらの発生プロセスが如何に成立するか明らかにし、さらにパターン形成に関連した劣性変異を収集することを試みた。前後軸形成においては、Lefty1とCerlが胚遠位で傾いて発現することが遠位臓側内胚様の移動につながる。Lefty1の非対称な発現の起源を、Lefty1-LacZ Tgマウス及びin situ hybridizationで調べたところ、着床期の原始内胚葉で非対称に発現していることが明らかになった。また、この非対称性はハンギングドロップ培養でも出現することから、胚盤胞自立的に非対称性が生み出されうることが明らかになった。左右軸形成においては、Nodalは左側側板中胚葉で左右非対称に発現が開始する。この左右初期決定の仕組みを明らかにするため、野生型胚、各種変異胚並びにNodalやLeftyを異所発現させた全胚培養胚で観察されたNodal,Lefty発現の挙動に関するデータに基づき、Nodal-Leftyの反応拡散を表すシミュレーションを作製した。このシミュレーションは、様々な左右軸関連の変異マウスの表現型を説明するこができた。Nodal-Leftyによる反応拡散は、ノードに生じる遺伝子発現の微弱な左右非対称性を、側板中胚葉で全か無かのNodal発現に増幅させることが明らかになった。 さらにENUミュータジェネシスによって、パターン形成に関連した劣性変異を作出した。スクリーニングには、Nodal.β geoマウスを利用し左右軸異常を検出できるようにした。G1の55ラインをスクリーニングした結果、左右軸形成異常を含む、様々な変異体を収集することが出来た。
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