研究概要 |
(a)ミトコンドリア分裂因子の同定と機能 新たにミトコンドリア分裂因子ELM1を同定した。この因子は,動物や酵母には存在しない植物特異的な因子である。酵母ツーハイブリッド法,およびBiFC法により,ELM1タンパク質がDRP3との相互作用を持つ事が明らかとなった。また,ELM1欠損すると,DRP3タンパク質がミトコンドリアに局在しなくなるのに対し,DRP3の変異体ではELM1のミトコンドリア外膜への局在は影響を受けなかった。この事から,ELM1はDRP3をミトコンドリアにリクルートする機能があることがわかった。また,DRP3は,ミトコンドリアとペルオキシソームの分裂装置として機能するが,ELM1はペルオキシソームの分裂には影響を与えなかったことから,ミトコンドリア特異的な分裂装置であると考えられた。 (b)タペート細胞におけるミトコンドリアのダイナミクス 葯中の細胞でミトコンドリアを容易に観察するために,葯で発現すう各種プロモータを付加したミトコンドリア移行型Kaede(波長変換可能の蛍光タンパク質)遺伝子を構築しだ。この遺伝子をシロイヌナズナ,およびイネに形質転換した。その結果,花粉形成あ過程でタペート細胞が崩壊する前後にミトコンドリアが葯室に放出される事がわかった。これまで知られているプログラム細胞死では,細胞の前にオルガネラが崩壊する。今回われわれが観察した結果では,完全な形のミトコンドリアがタペート細胞の外に放出されており,非常にユニークなプログラム細胞死がタペート細胞で起こっていることが示唆された。
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