研究課題
ニホンナシ'豊水'休眠芽のネクロシス発生の要因解明に関して、休眠打破のための低温遭遇開始時期を異なる3段階を設定して、休眠芽の温度感応について精査した。すなわち、'豊水'ポット植え樹について暖冬条件を想定した低温(≦7.2℃、600時間(CH))に秋季から冬季にかけて遭遇させた後、16℃以上に制御した温室内へ搬入する区、低温遭遇を1ヵ月間回避(16℃以上の温室内)後に低温遭遇させて、再び温室内に搬入する区、同様に低温遭遇回避を2ヵ月間行い、低温遭遇後に温室搬入する区を設けた。これらは、同一の個体を用い2005年から2009年まで4年間にわたり行った。以上の実験条件で生物季節学的変化、すなわち萌芽・開花やネクロシス発生などの調査と同時に、低温遭遇前、0、300、600CH、4000及び8000GDH等の異なるステージの休眠芽について核磁気共鳴イメージング(MRI)を用いて混合花芽中の水動態を計測、さらに走査型電子顕微鏡(SEM)による形態学的解析を試みた。その結果、低温処理(暖冬条件)は自発休眠打破には有効であったが、低温遭遇の開始時期が遅れるほど発芽不良・花芽のネクロシス現象が多発する傾向であり、混合花芽の基部の形態学的変化により異常小花形成、すなわち小花の数も増えた(子持ち花)。そして暖冬条件が累積するほど花芽のネクロシス現象が早く発生した。本研究の条件下では休眠中の小花の増加は開花数の増加をもたらさなかった。一方、水動態のMRI観察から、十分に低温遭遇した樹の休眠芽に比べて、特に処理樹の鱗片の自由水(T_2)・水分含量(PD)とも明らかに低位であることが判明した。加えて、暖冬条件下の経年履歴が長くなるほど休眠芽基部においてPD値およびT_2値が局所的に増加しており、その増加が子持ち花の形成と関連し、また、休眠芽内における求頂的水移動の支障がネクロシス発生と関係すると推察された。
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J.Japan.Soc.Hort.Sci (In press)
Plant Cell Reports 28
ページ: 1709-1715