ダイアンソウイルスRed clover necrotic mosaic virus(RCNMV)のRNAサイレンシング抑制及びRNA複製に関わる宿主因子とウイルス因子を同定するために必要な実験系を構築し、候補宿主タンパク質を少なくとも一つ特定できた。実験系の一つは、アグロバクテリウムによりウイルスタンパク質を一過的に発現する系で、もう一つの系はin vitro翻訳・複製系(BYL)をKomoda et al.(PNAS 2004)の方法により調製した。アグロバクテリア系ではRCNMVの複製酵素成分であるp27タンパク質(p27)にエピトープタグを付け(p27-TEP)、RNA複製に関わる宿主因子の免疫学的手法による単離を同時に試みた。現在、p27-TEPに特異的に結合するタンパク質としてHSP70を得ている。また、p88のフレームシフト下流のp57がRCNMVのRNA複製複合体に含まれている可能性を示すデータを得ている。さらに、p27とp88がそれぞれ相互作用することを免疫沈降で明らかにした。RNA複製複合体はRNAサイレンシングの抑制とRNA2の翻訳にも密接にリンクしているため、本手法による宿主因子の単離同定は、RNAサイレンシング、翻訳、複製ネットワークの解明につながることが期待される。 BYL系での実験では、RCNMVのキャップ非依存的翻訳とRNA複製(今のところはマイナス鎖合成)を再現できることを明らかにし、翻訳とRNA複製に関わるRNAシス因子を同定した。その結果、RCNMV RNA1のキャップ非依存性翻訳に必要な因子とRNA複製に必要な因子が独立して存在することが明らかになった。
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