研究概要 |
ダイアンソウイルス属のRed clover necrotic mosaic virus (RCNMV)を1本鎖プラスセンスRNAのモデルウイルスとして用い,ウイルスタンパク質翻訳,RNA複製の制御に関わるいくつかの新たな機構を明らかにした. (1)感染後期に細胞内に蓄積するRCNMV RNA1の3'非翻訳領域(UTR)に由来する約450塩基の低分子量RNA (SR1f)がin vitroで濃度依存的にcap依存的翻訳とcap非依存的翻訳をいずれも抑制すること,また,SR1fは,サブゲノムRNAではなく,RNA1 3' UTRの5'側近傍に存在するRNA因子が5'→3'エクソリボヌクレアーゼ分解から3'側のRNAを守ることにより蓄積する分解中間体であることを示した.SR1fは,感染後期でのウイルスの翻訳を抑制し,複製段階へとスムーズに移行させるリボレギュレイターである可能性を示唆した. (2)RNA1の3'TE-DR1依存cap非依存的翻訳はリボソームスキャニングで行われるが、5'UTRの要求生は宿主によりことなり,5'末端のステムループ構造はRNAの安定性と翻訳促進いずれにおいても重要であることを明らかにした.(3)ストレプトタグ法を用いRCNMV RNAに特異的に結合するいくつかの宿主タンパク質を得,質量分析を行った.約10種のタンパク質を同定し、その内の3つは、RNA1の5'UTRに結合するAC rich binding factor (ACBF)とThreony1-tRNA synthetase (ThrRS).,RNA1の3'UTRに結合するPoly(A)-binding protein(PABP)である。これら3種の遺伝子の完全長cDNAをタバコBY-2細胞より単離した.これらのタンパク質の過剰発現は3'TE-DR1依存cap非依存的翻訳とRNA合成を促進したことから、宿主因子である可能性が強く示唆された.(4)タバコ培養細胞由来in vitro翻訳複製系でsiRNAを生成するDicer活性があることを明らかにした。本研究は、RNAウイルスの新たな感染戦略を示すとともに、ウイルスRNA複製と翻訳に関わる新たな宿主因子候補を明らかにした。
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