研究概要 |
寄生蜂に寄生されたホストでは、精巣や血球でアポトーシスがおこることがわかっており、寄生にとっては重要なホスト制御機構の一つであると考えられている。通常アポトーシスは多くの因子(IAP, ICAD,14-3-3など)で制御され、実行カスペースへの経路が制御されている。そこでまずアワヨトウのIAP遺伝子を特定し、ノックダウンを行うことでアポトーシスがどのように制御されているかを明らかした。チョウ目昆虫ではdsRNAを使ったノックダウンは効率が低くノックダウンできたかが分かりにくいために工夫が必要であった。体腔中を流れている血球は常に造血器官からの補充が考えられるために、造血器官を取り除くために方法として遊離腹部を作ることことを考案しノックダウン効率をあげた。IAPをノックダウンするとアポトーシスが誘導され実行カスペースcaspase3/7の活性が上昇した。他のアポトーシス制御因子では効果が検出できなかった。しかしまだ寄生されたホストでのIAP因子の制御機構の解明には至っていない。もう一つは、今回の研究で脂肪体細胞がホストの生体防御反応にかかわっていることを示せたことが大きな進展である。従来脂肪体は養分の貯蔵器官として考えられていたが、脂肪体に細胞性防御反応に関与する細胞が存在すると考え、その可能性をin-vitro系の検出系として、スライドグラスチェンバーを使い、包囲化が起こりつつある異物を未寄生ホストから取り出し培地中で数時間インキュベート、包囲化が起こりつつある異物の方に脂肪体細胞が移動していくかを調べた。培地の検討で時間を使ったが、MGM450に培地でこの問題を解決した。さらに包囲化の初期に異物表面に付着する血球が同定できたことから今後の研究につなげる。
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