研究概要 |
Monochamus属種のカミキリムシからBursaphelenchus属線虫を分離し,アイソレイトを確立することが出来た。そのうちの2種は新種であった。線虫を25℃で1-2週間飼育した後,5℃に16週間保存することによって,終期幼虫の割合が高まることが示された。この技術を用いて,交雑実験が容易に行うことができるようになった。マツノザイセンチュウとニセマツノザイセンチュウの種間雑種の形成率はアイソレイト間で異なり,北海道産のニセマツノザイセンチュウは本州のそれよりも雑種形成能力が高かった。種間雑種系統の累代飼育によって,雑種個体群の核ゲノムがどちらかの種のそれに急速に近づくことが分かった。また,飼育期間中に雑種個体群の絶滅は起こらなかった。北海道の媒介昆虫シラフヨツボシヒゲナガカミキリはニセマツノザイセンチュウを伝播し,その保持率は23%であった。また,その線虫はエゾマツとトドマツの内樹皮にいることが分かった。シラフヨツボシヒゲナガカミキリ幼虫はアカマツで飼育可能であることも分かった。 アカマツ枯死木の高さ別に材を採取してマツノザイセンチュウを分離したところ,枯死木内よりも枯死木間で線虫個体群の遺伝的分化が起こることが示された。日本各地からマツノザイセンチュウを採集して,DNA解析によって雑種個体の存在を調査したが,雑種個体の存在は確認できなかった。 クワ園で媒介昆虫キボシカミキリ,クワカミキリ,トラフカミキリの個体群動態とクワノザイセンチュウ保持個体数の割合の調査をおこなった。キボシカミキの成虫は6月から12月まで発生したが,他の2種は6〜8月にしか発生しなかった。キボシカミキ成虫のクワノザイセンチュウ保持率は平均44%であり,その値は低かった。クワノザイセンチュウの遺伝的マーカーのブライマー設計は完成しなかった。
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