研究概要 |
ウナギの種苗生産技術の確立を図るため,野外調査と室内実験を併用して以下のことを明らかにした。 (1)成熟過程 (1)浜名湖と三河湾で採集した下りウナギについて降海行動に伴うステロイドホルモン(E_2,T,11-KT),T_4,GTH, GnRHの動態を明らかにした。 (2)ホルモンを投与しないで親ウナギを催熟するため,毎日5-15℃の変動水温を下りウナギに与えたところ,3ヶ月目にGSIが8.3%の個体が出現し,世界初の非ホルモン催熟の事例を得た。 (2)産卵過程 (1)2006年7月および8月の航海ではウナギ卵・親魚は採集されなかった。 (2)φ3mの大型水槽で30尾の♂♀親ウナギの産卵行動を観察したところ,顕著な追尾行動が見られないまま,放精,放卵が行われることを確認した。ウナギの産卵は少なくともサケのようなペア産卵ではないと考えられた。 (3)発育過程 (1)天然プレレプトセファルスと人工魚の発達過程を比較するため,人工魚を水温19〜28℃で飼育したところ,人工魚の発達は25〜28℃で飼育した時,天然のそれと等しくなった。一方通常行われている19〜22℃においては,特に19〜20℃で奇形率が高く,また孵化率・生残率は19℃で有意に低く,19〜22℃は飼育温度としては低すぎるものと考えられた。 (2)走光性の個体発生過程を調べたところ,レプトセファルスと変態期仔魚は強い負の走光性を示したのに対し,シラスウナギはいかなる走性も示さなかった。
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