研究概要 |
本研究計画の最終年度に当たる本年度は, 前2年の成果のまとめと再現性確認の実験・調査を実施し, 以下の成果を得た。 (1)成熟過程i)下りウナギの内分泌状態の観察:浜名湖と三河湾で採集した下りウナギのホルモン動態を3ヶ年に亘り調べた。秋〜初冬の降海行動に伴って, E2, T, 11-KT, LHが上昇し, GHが下降することがわかった。FSH, TSHは変化しなかった。ホルモン動態をほぼ把握できた。ii)非ホルモン催熟実験: 大型回遊水槽に親ウナギを収容し, 5-15℃の日周変動水温を与え3ケ月後に成熟度を調べた。有意差は無かったものの, 卵径, GSI, 組織像に催熟効果が認められた。水温刺激で自然催熟できる可能性が示された。今後光や運動の影響を検討する。 (2)産卵過程i)卵・親魚の採集:2008年5〜7月の白鳳丸航海で孵化後3-7日のプレレプトセファルス約150尾を得た。開洋丸で二ホンウナギの産卵後雌親魚2尾,産卵前雄親魚2尾,オオウナギ雄親魚1尾を得た。天然仔魚の発育過程がわかった。生殖腺, 脳下垂体, 耳石は解析中。ii)産卵行動実験: 人工受精法と雌雄のペアリングによる自発産卵法の比較を行ったところ, 自発産卵法で得た卵の方が受精率が高く, 孵化仔魚の奇形率は低かった。水温22℃で最も産卵前の活動が活発になることがわかった。この結果は,直接採卵技術の向上につながる。 (3)発育過程i)初期餌料の探索:天然海域で採集されたレプトセファルスのアミノ酸の安定同位体解析を行い, 栄養段階を推定したところ, 2.2-2.4の低値を示し,動物プランクトンが少量混じった植物プランクトン主体のマリンスノー状の餌を食べているものと推定された。ii)飼育技術の開発: レプトセファルス飼育専用に"レプトタンク"開発し, その自動給餌システムを考案した。これによって種苗生産コストの大幅削減が見込める。
|