2セットの父性メチル化インプリント領域を改変したマウス新生仔の卵母細胞を用い、雌ゲノムからのみ発生可能な既報に従い二母性マウスを作出した。本年度は特に胎盤形成に対する7番染色体遠位部に存在するlgf2-H19遺伝子および12番染色体遠位部にあるDlk1-Gtl2遺伝子の役割について、総合的に追究した。解析は、胎齢12.5日の胎盤にて行い、病理組織学的解析ならびにマイクロアレイおよび定量的RT-PCR法により詳細に検討した。その結果、両領域を欠損した非成長期卵子を用いて再構築した二母性胚由来の胎盤では、受精卵由来の正常胎盤と何ら差異は認められず、完全な機能的胎盤が形成されたことが証明された。ところが、lgf2-H19遺伝子領域が、正常なインプリント状況に改変されている胎盤では、サイズには可成りの改善が見られたものの、胎盤の組織構造には、依然明らかな異常が認められた。一方、Dlk1-Gtl2遺伝子の発現が正常になるよう改変された胎盤では、サイズの改善は限定されていたものの、胎盤の組織構造は顕著に改善されていることが、明らかとなった。マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析の結果からも、両インプリント領域の胎盤形成における作用が、裏付けられた。これらの結果から、2つの父性メチル化インプリント領域は、胎盤形成に対して補完的に機能していることを実証した。また、すべての遺伝子型の二母性胚由来のES細胞株の樹立に成功した。
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