研究概要 |
プリオン感染動物の中枢神経系組織では、プリオンの増殖に伴い、ミクログリアおよびアストロサイトが増生する。プリオンの増殖に反応して増生するグリア細胞から放出される種々のサイトカインやケモカインは病態の進行に促進的あるいは抑制的に働くと予測されるが、その実態は明らかではない。特に感染初期に起こる応答は病気の進行に抑制的に働くことが予測される。そこで、昨年に引き続き、DNAマイクロアレイ法により、感染後早期の遺伝子発現の変化を網羅的に解析した。接種後60日から90日にかけて発現が増加した遺伝子群のなかで、文献的にミクログリアで発現する遺伝子を選択したことろ、Cc15, Cc19, Cxc110, Fogr1, T1r2などモノサイト/マクロファージのM1-typeの活性化のマーカーとなるケモカイン等の発現が優勢であった。M2-typeの活性化の指標となる分子(Cd14, Fcgr2b)も発現上昇が認められているが、M1-tpyeの反応が亢進している傾向にあると考えられた。また、プリオン接種後60日から発現が上昇していたCd14の遺伝子欠損マウスを用いてプリオン感染実験を実施して病態を詳細に解析した。その結果、Cd14欠損マウスでは、野生型マウスと比較して、異常型プリオン蛋白質の蓄積が遅れ、潜伏期が有意に延長した。しかし病末期における病理組織学的変化はCD14欠損マウスと野生型マウスで顕著な差は認められなかった。Cd14分子を介するシグナル伝達は病気の進行に促進的に働くことが示唆された。
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