研究概要 |
1)統計遺伝学的解析:約3万個のマイクロサテライトマーカーにつき1次、2次、3次スクリーニング後アレルの再現性を検討し、マーカー59個を選出した。さらにその周辺約200kbの領域の1,564個のtag SNPについて全スクリーニングサンプル約450ペアにより関連解析を行った。その結果、167個のSNPに有意差を認めた。この中から31個のSNPを選択し、独立の2,450ペアのサンプルにつき解析を行ったところ、1個のSNPで有意差が見られた。さらに周辺の6個のSNPのタイピングを全サンプル約2,900ペアで行ったところ、さらに3個のSNPについて有意差を認めた。2)薬物モデルを用いた解析:PCP投与ラット(5mg/kg)の脳の5部位(内側前頭皮質、側坐核、線条体、海馬、後帯状皮質)から、マイクロアレイによるスクリーニング後、定量的RT-PCR法により、2倍以上の変化を来すことを確認した10個の遺伝子について関連解析を行った。6個につき終了し、そのうちの4個に関連を見出した。これらにつき大規模サンプル(約2,450ペア)による確認のための関連解析を行い、2つの遺伝子について関連を見出した。 3)遺伝子改変マウスの解析:先に関連を見出したGRIA4遺伝子のノックアウトマウスを作出し系統的な行動解析を行った。統合失調症のエンドフェノタイプであるPrepulse inhibition(PPI)の障害が見られた。また変異型マウスは野生型マウスより早いタイムコースでNMDA型受容体の選択的人工アンタゴニストMK-801による影響があらわれ、MK-801に対する感受性が増大していることがわかった。以上からGRIA4が統合失調症の病態の一端を担っている可能性が考えられた。また同様に関連を認めているGRM3のノックアウトマウス作出に成功し、行動解析に向け戻し交配を実施中である。
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