研究概要 |
獲得免疫系の最大の特色は、その多様性および寛容性である。無数の外来性抗原(非自己)を認識し、反応する一方、自己抗原に対して不応答性を示すという(寛容性)、きわめてユニークなシステムを築き上げている。この機能を担っているのはB細胞の場合、B細胞レセプター(BCR)である。したがって、BCRを介する抗原認識によって引き起こされるシグナル伝達機構の研究は、B細胞の分化・増殖・細胞死の運命制御機構を解明するための必須の課題である。BCRを介するシグナルの第一段階に、複数のチロシンキナーゼ(PTK)群が関与することは明らかにされてきたが、これらPTK群のみの制御では、多様な運命決定を説明することはできない。すなわち、PTK群によってリン酸化されるターゲット分子群の多様性を考えると、これらターゲット分子群がエフェクター群へのアダプターとして機能し、エフェクターへの交換効率を制御することにより、シグナルの量的・質的変換を司どっているのではないかと考えられる。 本研究はアダプター分子BCAPに的を絞り、BCAPがどのようなメカニズムを用いて、PI3キナーゼを活性化し、ひいては、B細胞の分化にインパクトを与えているのかを検討した。CD19はBCAP同様、in vitroでPI3キナーゼの総合活性を有するB細胞特異的分子である。BCAP,CD19共に欠損したマウスを解析することにより、1)BCAP,CD19は協同して、PI3キナーゼを膜にリクルートし、活性化している。2)そして、そのPI3キナーゼ活性化は、Bリンパ球の分化に必須であることを明らかにした。
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