研究概要 |
ヒト血漿検体を用いたスフィンゴ脂質の定量解析を行った。 当初予定していたスフィンゴシン1-リン酸(Sph-1-P)だけでなく,スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC),ジヒドロスフィンゴシン1-リン酸(DHSph-1-P),スフィンゴミエリン(SM)の解析も行った。多数例の検体の解析を通じ,Sph-1-PとSMの良好な相関を認めた。SPCは,その測定系を構築することができたが,ヒト血漿・血清においてはその濃度は測定感度以下であった。 in vitroの系の実験で,SPCから(lysoPLDを介した)Sph-1-Pの産生は,非生理的な高濃度のSPCを用いてようやく微量認める程度であった。従って,一部の研究者が主張しているSph-1-PのソースとしてのSPCの意義はないと考えられた。また,Sph-1-PとDHSph-1-Pの挙動は必ずしも一致しなかった。スフィンゴシン,Sph-1-Pともに,血清・血漿中では代謝変換を受けず,安定であった。 以上より,血漿(血清)中のSph-1-Pは,SM→セラミド→スフィンゴシン→Sph-1-Pの産生系路をとり,細胞内のスフィンゴシンキナーゼにより産生されたSph-1-Pが細胞外へ放出されるものと考えられた。
|