本研究は、(1) 抗血小板薬の薬効と関連することが過去の研究で示唆された既知の因子(血漿中物質、血小板や他の血球、造血前駆細胞中の因子) や (2) 未知の因子、の中から抗血小板薬のモニタリングに有効な物質を探索し実際の臨床検査に応用することを目的に開始された。具体的には患者の血球 (造血前駆細胞、末梢血球、血漿蛋白) について、(1) では候補物質の量、mRNA 発現量などを解析し、(2) では同様のサンプルを用いて網羅的解析、すなわちトランスクリプトーム解析やプロテオーム解析を行い、抗血小板薬の効果によって変化する物質を探索する。最近では抗血小板薬服用中にもかかわらず血小板機能が抑制されていない患者では心血管イベントが明らかに多いと報告されている。抗血小板薬に巨額の医療費が投じられているにもかかわらず、抗血小板薬が無効である症例を選別出来ていないことは大きな問題である。現在のスタイルの血小板機能検査ではプロトコールの標準化が非常に難しいため抗血小板薬モニタリングの早急な確立は不可能と考えられる。したがって抗血小板薬の薬効を評価し、予後を充分に予測しうる新たな物質の同定が急務である。
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