研究課題
樹状細胞や神経、皮膚ランゲルハンス細胞、骨細胞などは、細胞表面に多数の樹状突起「デンドライト」を発現し、デンドライトはストレスセンサーとして受容したストレスを化学的シグナルに変換して多様な生体防御反応をイニシエーションする。平成20年度は、上記細胞群に於いてデンドライトを起点とするシグナルネットワークを介するホメオサーベイランス機構を解明した。まず、酸化ストレスはDNA損傷シグナル等の活性化を惹起し様々な疾病の発症や進展に関わるが、抗酸化ペプチドであるペロキシレドキシン(PRDX)ファミリーであるPRDX1と5の発現を誘導した。また、PRDX1と5の発現は転写因子ETSとクロマチン蛋白HMGB1の会合を介して、PRDX2の発現はFOXO3で制御され、生命維持に重要な抗酸化システム存在を解明した。また、ラットを用いたストレス実験では、種々のストレス刺激により視床下部ではアドレノメデユリン(AM2)と下垂体後葉ホルモンが、青斑核ではAM2とノルアドレナリンの合成が誘導され、神経分泌ニューロンの細胞体およびdendriteではストレス刺激からペプチド生成へと変換されることが解明された。また、樹状細胞は神経ペプチドであるドパミンを合成・放出し、T細胞上のD1様受容体を介してTh17細胞への分化を誘導すること、D1様受容体阻害薬でリウマチモデルの関節炎が制御されることを示し、神経ニューロンと同様に樹状細胞とT細胞の免疫シナプスを介して、T細胞の活性化や分化を調節することを解明した。また、皮膚樹状細胞であるLangerhans細胞は、植皮やUVB等のストレスによりRANKL/RANKを介する角化細胞との相互作用により抑制性サイトカインIL-10を産生し、制御性T細胞を誘導して免疫抑制を齎すことを解明した。さらに、一酸化窒素合成酵素(NOS)完全欠損マウスを用いた検討により、NOSは低骨代謝回転と共に、骨形成の強力な抑制により骨量を減少させたが、その機序としてNOSストレスによるアンギオテンシン変換酵素活性を介した骨系細胞デンドライトネットワークの抑制が示唆された。以上、平成20年度は、デンドライトを起点とするストレス刺激の細胞内シグナルへの変換によるホメオサーベイランス機構と共に、デンドライトを起点とするシグナルネットワークが免疫系と神経系、さらに、皮膚や骨系の細胞との間に普遍的に存在することを解明した。
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