研究概要 |
(1)H.pylori感染による慢性胃炎から胃発癌に至る過程において、以下の成果を得た。 A)H.pylori感染によって胃粘膜に増殖因子であるRegIα、REGIVが強く発現した。このうちRegIαはIL6,IFNγによって発現が誘導され、一方RegIVは増殖因子によって発現が促進した。これらの因子は胃上皮細胞におけるアポトーシスを強く誘導したが、その際Aktを介するBc1X1発現が重要な役割をはたしていた。 B)H.pylori感染によってDNA編集酵素であるActivation-induced cytidine deaminase(AID)が胃粘膜細胞に強く発現していた。一方AIDトランスジェニックマウスでは胃に腺腫が発生していた。さらにヒト胃上皮細胞株を用いた検討では、H.pyloriによって粘膜細胞のAIDが強く発現した。さらにその際p53への変異が導入された。またAIDはTNFαによっても発現が促進した。これらのAID発現はNFkB依存性であった。またH.pylori感染時にAIDをsiRNAによってブロックすると、p53の遺伝子変異の導入は著明に抑制された。以上よりH.pylori感染は直接的、あるいはサイトカインを介して間接的にNFkB依存性に胃粘膜におけるAID発現を増強させ、その結果p53などの癌関連遺伝子に変異を導入することによって癌化を促進させる可能性が示唆された。 (2)潰瘍性大腸炎の腸粘膜ではRegIαの発現が増強していた。これらの発現は炎症の程度と相関していた。さらに大腸細胞を用いた検討では、胃粘膜細胞を用いた場合とほぼ同様の成績が得られた。一方、潰瘍性大腸炎粘膜では、H.pylori感染胃粘膜と同様AIDが強く発現していた。また大腸粘膜細胞を用いた検討では、AID発現はTNFα、IL4によって誘導され、同時に遺伝子変異が導入されることが確認された
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