研究概要 |
新しく種々の遺伝子改変H.pyloriの供与を受けて、in vivo,in vitroのH.pylori感染実験をおこなった。 1)その結果マウスへの感染実験では、CagPAI-KO,CagE-KOヘリコはほとんど胃炎を生じず、さらにAIDの発現も誘導しなかった。一方CagA-KOヘリコでは、軽度の炎症が生じたのみであった。 2)一方in vitro実験では、CagPAI-KO,CagE-KOヘリコは、NFκB活性化、AID発現、遺伝子変異のいずれもまったく誘導しなかった。これに対してCagA-KOヘリコでは、NFκBの活性化は30%低下した。またAID発現は40%低下した。さらにp53遺伝子の変異頻度は、野生株に比してこれも25%低下した。以上よりCagAはH.pyloriによるNFκB活性化の約1/3程度を担っているのみで、主要な因子は別にあるものと考えられた。またこの因子はタイプ4分泌装置を介して細胞に導入されるものと考えられた。さらにH.pyloriによる遺伝子変異導入については、H.pyloriによるNFκBの活性化が中心的な役割を果たしているものと想定された。 3)CagA-KO,CagPAI-KOヘリコを感染させたC57blackマウスの脾細胞を採取してこれをH.pylori抗原と培養したところ、IFNγ産生か亢進した。このことからこれらのヘリコにおいてもH.pylori特異的なT細胞は産生しうるものと考えられた。 4)以上より、胃粘膜局所における炎症にはCagPAI、すなわち4型分泌装置は必須であり、AID活性化にも必須であることが明らかとなった。
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