研究概要 |
1) ヒトH.pylori感染胃粘膜、潰瘍性大腸炎粘膜におけるreg蛋白の発現を見たところ、regIα、reg4の強い発現が認められた。 2) そこでヒト胃、大腸粘膜細胞株を用いてreg遺伝子、蛋白の発現調節を検討した結果、H.pylori感染そのものは胃粘膜におけるreg蛋白の発現に影響しなかったが、種々のサイトカインのうち、IFNγ、IL6,IL22がregIαの発現を強く増強した。一方reg4の発現はサイトカインでは誘導されず、EGF,HGFなどによって強く誘導された。 3) 次にreg遺伝子のるしフェラーゼアッセイをおこなったところ、regIα遺伝子の上流にSTAT3結合部位があり、これがIL6/IL22 resonsiveサイトと一致していた。さらにregIα遺伝子にはIFNγ responsiveサイトも認められた。これに対してregIV遺伝子上流には、MAPKによって活性化されるサイトが存在していた。以上より炎症胃、大腸粘膜において、regIαは種々の炎症性サイトカインによって、reg4は増殖因子によって発現が増強し、炎症粘膜における増殖の亢進に関与しているものと考えられた。 4) AID-TGマウスを用いた実験で、胃、大腸、肝組織において、様々な遺伝子変異とともに、CGH解析によって種々の遺伝子増幅、遺伝子欠損が増強していた。さらにヒト胃粘膜細胞、大腸粘膜細胞、肝細胞を用いたin vitro実験で、H.pylori感染やAID導入によって、同じくCGH解析によって様々な遺伝子増幅、欠損が生じていることが明らかとなった。以上より、AIDの誘導は、遺伝子変異のみならず、染色体の不安定性にも関与しているものと思われた。
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