研究概要 |
1.間葉系細胞が産生する分子による心筋細胞分化誘導機序 間葉系細胞由来の心筋分化誘導因子(X因子)の心筋細胞分化における役割を明らかにするためにP19CL6細胞でX因子をノックダウンし,その表現型を解析した.野生型P19CL6ではDMSO刺激で心筋細胞へと分化するのに対して,X因子をノックダウンしたP19CL6細胞においてはDMSO刺激によっても心筋細胞への分化がおこらなくなった.以上の結果よりX因子が心筋分化誘導に必須の分泌蛋白であることが明らかになった. 2.心筋細胞分化に働く増殖因子およびその下流シグナル ES細胞において心筋分化誘導に及ぼすWntの影響を分化過程の初期と後期にわけて解析した.分化初期にはWntは心筋分化を促進し,血球系細胞への分化を抑制した.逆に分化後期ではWntはBMPのシグナルを抑制することにより心筋分化を抑制し,血球系細胞への分化を促進することが明らかになった.このようにWntシグナルの心筋細胞分化に及ぼす影響は発生時期によって異なっており,このことがこれまでWntの心筋分化誘導能に関して相反する結果が報告されてきた原因の一つと考えられる. 3.心臓特異的リン酸化酵素の心臓発生における役割 生体における心筋特異的リン酸化酵素Midoriの機能解析のために、Midori遺伝子の翻訳開始点から2.8kbをβ-galactosidase遺伝子とneomycin耐性遺伝子に置換するターゲティングベクターを構築し,常法に従いノックアウトマウス(Midori-KO)を作成した.Midori-KOは正常に出生し,成長にも異常はみられない.同じくα-kinaseファミリーに属するHeart α-kinaseとの間に機能的重複が存在する可能性が考えられた.
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