研究概要 |
活性型チロシンキナーゼによる造血細胞の腫瘍化機構を明らかにするために、好酸球性白血病の原因遺伝子FIP1L1/PDGFRαを造血幹細胞、骨髄系共通前駆細胞、リンパ系共通前駆細胞、骨髄単球系前駆細胞、赤巨核球系前駆細胞などに導入した。その結果、FIP1L1/PDGFRαは、いずれの細胞に導入された場合もサイトカイン非依存性の増殖を可能にするが、造血幹細胞に対してのみ永続的な細胞増殖をもたらした。また、リンパ系共通前駆細胞、赤巨核球系前駆細胞に導入すると好酸球系への系統転換がもたらされた。これらの結果から、FIP1L1/PDGFRαの異常は造血幹細胞レベルでおこり、好酸球系細胞への分化を選択的に誘導することが明らかとなった(論文投稿中)。 新規抗アポトーシス分子Anamorisnのトランスジェニックマウスを作製した。本マウスでは、腫瘍の自然発生は見られなかったが、脾臓において白脾髄が拡大し、B細胞の増加が認められた(論文作成中)。また、約800例の悪性リンパ腫症例においてAnamorsinの発現を免疫組織染色で解析した結果、Anamorisnがびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫やろほう性リンパ腫の一部の病型で予後不良因子となることを明らかとした(Leukemia Lymphoma49:113-121,2008)。また、Anamorsin結合分子として、Picot(thioredoxin-like2)を同定した(論文作成中)。 造血幹細胞からのBリンパ球の分化誘導を試み、完全にヒト成分のみで構成されるヒトリンパ球培養系を確立した。この系では、ヒトAB血清3%存在下、SCF,Flt3-ligand,IL-15を添加し2-3週間培養することにより2000個のヒトCD34陽性細胞から約1×10^5個のCD56陽性細胞を産生される(Exp Hematol,in press)。
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