研究課題
自閉症を高率に合併することが知られている結節性硬化症の責任遺伝子TSC2に変異をもつEkerラットのスパインを超微形態学的に検討し、多数の融合した異常ミトコンドリアとシナプス未形成のフィロボディアを確認した。現在その分子メカニズムの特定を急いでいるが、TSC2-Rheb-mTORの異常が何らかのメカニズムを介してミトコンドリアの増殖あるいは融合を促進し、そのためにスパイン成熟の遅れをきたすものと考えられた。この点では、臨床遺伝学的研究により、神経接着因子(NRCAM)の遺伝子多型が自閉症と有意に関連することを見出しており、興味深い。オスのメス化作用が知られている環境ホルモンのラット新生仔期における低用量暴露が、成長後のオスのみに学習障害と多動をきたし、かつEstrogenα受容体(ERα)アンタゴニスト投与によって、環境ホルモンの脳への影響を未然に防ぐことができた。環境ホルモンの作用はラット胎仔海馬組織の初代培養系でも観察することができ、スパインの成熟遅延が見られた。このメカニズムにもERαの関与が証明された。自閉症は男児に圧倒的に多い(3-4倍)ことがよく知られている。かつ研究代表者が最近開設した成人アスペルガー症候群(自閉症スペクトラム)の専門外来での経験では、男性患者には性同一性に障害の推測される例が少なくないことがわかってきた。そこで、健常成人男女を対象として社会性の脳基盤の男女差に着目した研究を行った。女性で高いことが知られている協調性得点を人格質問紙で評価し、これに関連する脳部位を検索したところ、両側の下前頭回と左の内側前頭前野が特異的に女性でのみ有意な正の相関を示した。下前頭回は自閉症の認知異常との関連が推定されているミラーニューロンを担う部位であり、興味深い結果と考えている。現在男女差と関連する自閉症の分子機構として、性差のあるホルモンの代表であるオキシトシンに着目して研究を開始している。
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