研究課題
対象は、DSM-IV診断基準により診断された、双極性障害患者(双極I型障害43名および双極II型障害患者16名)、および健常者(59名)である。これらの被験者の末梢血液より採血を行い、リンパ球を分離後、EBウイルスを用いて、リンパ球を株化した。株化したリンパ芽球は、いったん凍結した。これらの細胞を、2本のフラスコに分けて、独立に再培養した後、これらの細胞を回収し、RNAを抽出した。得られたRNAより、逆転写を行ってcDNAを作成した。ABI-9700HTおよび今回新たに設計し、測定の妥当性について検討を行ったTaqManプローブを用いて、RT-PCR法により、GAPDHを対照遺伝子として、候補遺伝子の発現量を測定した。結果は、2本のフラスコの平均により求めた。その結果、双極I型障害において、スプライス型XBP1、未スプライス型XBP1、および総XBP1のmRNA量が有意に低下していた。小胞体シャペロン遺伝子である、GRP78、CHOP、GRP94、およびCALRについては、有意な変化は見られなかった。一方、神経特異的変異型POLGトランスジェニックマウスにおいて発現量が変化していた遺伝子の中から、双極性障害患者の死後脳解析で変動していた遺伝子と共通な遺伝子に着目することにより、双極性障害のマーカーとなる可能性が考えられる遺伝子を選び出したところ、シクロフィリンDの低下が両者に共通に見出された。これらのことから、培養リンパ芽球におけるXBP1の低下が、双極I型障害のバイオマーカーとなる可能性が考えられた。また、シクロフィリンDの変化がモデルマウスと患者死後脳で共通に見られたことから、今後更に検討を進める予定である。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件)
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