末梢血液における遺伝子発現定量を用いた双極性障害の診断法を開発するため、気分障害モデルマウスであるWfs1ノックアウトマウスの海馬における遺伝子発現解析を行った。12週齢および30週齢のWfs1ノックアウトマウスおよび同腹野生型マウスの海馬においてDNAマイクロアレイ解析を行い、共通に低下している遺伝子を探索したところ、Cdc42ep5およびRnd1という、Rho GTPaseに関係し、樹状突起の発達に関係する2つの遺伝子が見られた。また、うつ病患者死後脳における遺伝子発現解析を行った。その結果、99の遺伝子の発現変化が見られ、FGFR1、NCAM1、CAMK2Aなどが変化していた。また、CADおよびATP1A3は、うつ病、双極性障害あるいは統合失調症の患者のうち、自殺の有無と関連して変化が見られる遺伝子にも含まれていた。従って、これらの遺伝子は、うつ状態のマーカーとなる可能性が考えられた。また、双極性障害患者の培養リンパ芽球において、小胞体ストレス関連遺伝子(XBP1、GRP78、GRP94、CHOP、CALR)の遺伝子発現解析を行った。その結果、小胞体ストレスに対する反応に、両群で差異が見られ、XBP1(totalおよびスプライス型)およびGRP94の反応が低下していた。これらが診断マーカーとなる可能性が示唆された。
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